「英単語は覚えているのに、テストになると点が取れない」
「中1の最初はできていたのに、いつの間にか英語が苦手になった」
「長文になると、何が書いてあるのか分からない」
中学生を指導していると、こうした声を本当によく聞きます。
英語が苦手だと感じている生徒の中には、「自分は英語ができない」とひとくくりに思い込んでいる子も少なくありません。
でも実際には、英語のすべてが分からないわけではないことがほとんどです。
中1で習うbe動詞と一般動詞の区別なのか、中2で一気に増える文法なのか、それとも単語力や長文読解の部分なのか
—どこかに小さな「分からない」が残り、それが積み重なって今の苦手意識につながっているケースが多いのです。
英語はとくに「積み上げ」が大切な教科です。
今日は、今の中学英語がどう変わってきたのかを踏まえながら、中1・中2・中3それぞれで起こりやすいつまずきを整理し、「どこまで戻ればいいのか」を一緒に考えていきます。
1.今の中学英語はどう変わった?「知っている」から「使える」英語へ
まず押さえておきたいのは、今の中学生が学んでいる英語は、私たち大人が中学生だった頃とはかなり違う、ということです。
小学校からの「接続」が前提になった
以前は、英語学習は中学校からが本格的なスタートでした。
しかし今は、小学校の段階ですでに英語に触れ、単語や表現に慣れ親しんだ状態で中学校に入ってきます。
つまり中学校の英語は「ゼロからのスタート」ではなく、「小学校での経験の続き」として組み立てられているのです。
現行の学習指導要領では、中学校で新たに指導する語数は1,600〜1,800語程度とされています。
以前の指導要領での1,200語程度と比べても、かなりの増加です。
それだけ「覚えきれない」「使いこなせない」生徒が出やすい環境になっているとも言えます。
「知っている」だけでは足りない4技能の時代
さらに大きな変化が、「聞く・読む・話す・書く」の4技能をバランスよく育てることが重視されるようになった点です。
文法問題を解いて和訳できればよい、という英語ではなく、実際に英語を使って情報をつかみ、自分の考えを伝えるところまでが求められます。
| ポイント | 以前のイメージ | 現在の中学英語 |
|---|---|---|
| 英語学習のスタート | 中学校から本格化 | 小学校英語から接続 |
| 中学校で扱う語彙 | 1,200語程度 | 1,600〜1,800語程度 |
| 学習の中心 | 単語・文法・和訳のイメージが強い | 4技能を総合的に活用 |
| 読む | 日本語に訳す | 必要な情報や要点をつかむ |
| 書く | 文法問題中心 | 自分の考えなどを英文で表現 |
| 話す | 発音・音読 | やり取り・発表など |
| 聞く | 単語や英文を聞く | 内容・概要・要点を捉える |
英語力は伸びている。でも「書く・話す」に課題が残る
では、実際に中学生の英語力はどう変化しているのでしょうか。
文部科学省の令和6年度「英語教育実施状況調査」によると、
中学校卒業段階でCEFR A1レベル相当以上(英検3級程度以上)の英語力を持つとされる中学生は52.4%でした。
2011年度の25.5%と比べると、2倍以上に伸びています。
| 年度 | CEFR A1相当以上の割合 |
|---|---|
| 2011年度 | 25.5% |
| 2017年度 | 40.7% |
| 2019年度 | 44.0% |
| 2021年度 | 47.0% |
| 2022年度 | 49.2% |
| 2023年度 | 50.0% |
| 2024年度 | 52.4% |
| 2027年度・国の目標 | 60%以上 |
※文部科学省「英語教育実施状況調査」より。外部検定でA1相当以上を取得した生徒と、学校でA1相当以上の力があると判断された生徒を合わせた割合。
数字だけ見れば、着実な右肩上がりです。
しかし文部科学省の資料では、近年の調査で特に「書くこと」「話すこと」の正答率が低下した問題が多いことも指摘されています。「書くこと」では基本的な単語や文法を使って英文を書く力、「話すこと」では無回答率の高さが課題として挙げられています。
実際、2026年度の全国学力・学習状況調査の中学校英語でも「聞くこと」「読むこと、書くこと」「話すこと」がそれぞれ調べられました。
つまり、今の中学英語で本当に問われているのは、
「単語や文法を覚えている」→「実際に英語を使える」
まで橋を架けられるかどうかです。
この「知っている英語」から「使える英語」への変化を理解しないまま、昔ながらの丸暗記の勉強法だけを続けていると、思うように点数が伸びない
—ということが起こりやすくなります。
2.英語はどこで苦手になる?中1・中2・中3のつまずきポイント
英語が苦手になる「きっかけ」には、学年ごとにかなりはっきりしたパターンがあります。ここでは中1・中2・中3、それぞれの時期に何が起きやすいのかを見ていきましょう。
中学1年生|最初の分かれ道は「語順」と「動詞」
中1の最初は比較的簡単です。そのため「最初のテストは80点だったから英語は大丈夫」と思ってしまうことがあります。
ところが、夏休みを過ぎて2学期あたりになると、状況が変わってきます。
特に大きな壁になるのが、be動詞と一般動詞の違いです。
I am a student.
I play tennis.
大人から見ればどちらも簡単な文ですが、英語を習い始めたばかりの中学生にとっては、この2つを区別することが最初の関門になります。
さらに、
He plays tennis.
Does he play tennis?
He doesn't play tennis.
と三単現・疑問文・否定文が加わると、一気に複雑さが増します。
中1チェックポイント
| チェック項目 | できている | 要確認 |
|---|---|---|
| 英単語をある程度正確に書ける | □ | □ |
| 英語の「主語+動詞」の語順が分かる | □ | □ |
| be動詞と一般動詞を区別できる | □ | □ |
| 肯定文から疑問文を作れる | □ | □ |
| 肯定文から否定文を作れる | □ | □ |
| 三単現のsを理解している | □ | □ |
| I・my・me・mineなどを使い分けられる | □ | □ |
| what・when・where・who・why・howが分かる | □ | □ |
ここで大切なのは、
「単語を知らない」のか、「英文の作り方が分からない」のか
を区別してあげることです。
単語をいくら覚えても、語順のルールが分からなければ英文は作れません。
逆に文法だけ教え込んでも、単語が足りなければ英文は組み立てられません。
この2つを混同したまま勉強を進めると、対策がずれてしまいます。
中学2年生|「一つ一つは分かるのに、全部混ざる」
中2になると、英語が苦手になる生徒がぐっと増えてきます。
理由の一つは、覚える文法が一気に増えることです。
過去形、未来表現、助動詞、不定詞、動名詞、比較級、最上級、接続詞……。
一つずつ授業を受けた直後なら解けても、定期テストでまとめて出題されると「どの文法を使えばいいの?」となってしまいます。
中2チェックポイント
| チェック項目 | できている | 要確認 |
|---|---|---|
| 過去形を使って英文を作れる | □ | □ |
| will / be going to などを使える | □ | □ |
| can / must / shouldなどの助動詞が分かる | □ | □ |
| 不定詞の基本的な使い方が分かる | □ | □ |
| 動名詞との違いを意識できる | □ | □ |
| 比較級・最上級を使える | □ | □ |
| 接続詞を含む長い文を読める | □ | □ |
| 英文を前から読んで意味をつかめる | □ | □ |
中2でさらに大きくなる問題が、「英文が長くなる」ことです。たとえば、
I want to play tennis with my friends after school.
という文を、
I=私は/want=欲しい/to=〜へ……と一語ずつ日本語に訳していると、長文になった瞬間に読めなくなります。
必要なのは、
I want to play tennis / with my friends / after school.
のように、意味のまとまりで英文を捉える力です。
こうした単語・文法・読み方のつまずきは、次のように静かに連鎖していきます。
単語不足
↓
英文を読むのが遅くなる
↓
長文が読めない
↓
英作文も書けない
↓
点数が下がる
↓
英語が嫌になる
この負の連鎖の怖いところは、学年が上がるほど取り戻しにくくなることです。
だからこそ、できるだけ早く「どこから分からなくなったのか」を見つけることが重要になります。
中学3年生|3年間の知識を「使えるか」が問われる
中3になると、「文法問題ならある程度解けるのに、長文が読めない」という生徒が増えてきます。
これは不思議なことではありません。
高校入試では一つの文法事項だけを問われるとは限らず、長文の中に中1・中2・中3の内容がすべて混ざっているからです。
そこに現在完了、受け身、分詞、関係代名詞なども加わり、長文・英作文・リスニングまで含めた総合力が試されます。
ここで一番伝えたいのは、
「中3の英語が分からない=中3で習った内容が原因」とは限らない
ということです。
たとえば関係代名詞が苦手に見える生徒でも、英文をよく見ると「そもそも主語と動詞を見つけられていない」ということがあります。
この場合、関係代名詞の問題をいくら解いても根本的な解決にはなりません。
中1の「英文の語順」まで戻る必要があるのです。
中3チェックポイント
| チェック項目 | できている | 要確認 |
|---|---|---|
| 中1・中2の基本文法を説明できる | □ | □ |
| 現在完了の基本が分かる | □ | □ |
| 受け身の英文を理解できる | □ | □ |
| 分詞を含む文を読める | □ | □ |
| 関係代名詞を含む文の構造が分かる | □ | □ |
| 長文から必要な情報を探せる | □ | □ |
| 英文の概要・要点をつかめる | □ | □ |
| 自分の考えを簡単な英文で書ける | □ | □ |
| リスニングで重要な情報を聞き取れる | □ | □ |
中3でも、必要なら中1まで戻って構いません。遠回りに見えて、実はそれが一番の近道です。
3.学年別チェック表で「どこから分からなくなったか」を診断
ここまでの内容を、一つの表にまとめてみます。
「うちの子、いったいどこでつまずいているんだろう?」と感じたら、まずこの表と照らし合わせてみてください。
| 学年 | 最優先チェック | つまずきのサイン | 復習ポイント |
|---|---|---|---|
| 中1前半 | 単語・語順 | 英文を作れない | 基本単語・語順 |
| 中1後半 | be動詞・一般動詞 | 疑問文・否定文が作れない | 動詞の基本 |
| 中2前半 | 過去・未来・助動詞 | 時制が混ざる | 中1の動詞 |
| 中2後半 | 不定詞・動名詞・比較 | 文法をなんとなく選ぶ | 基本文+各文法 |
| 中3前半 | 現在完了・受け身など | 長文の構造が分からない | 中1・中2の語順 |
| 中3受験期 | 長文・英作文・リスニング | 文法はできるのに得点できない | 語彙+基本文+読解 |
この表のポイントは、「今の学年」ではなく「つまずきのサイン」に注目することです。
たとえば中3の生徒であっても、
Does he ~? のような疑問文を正しく作れないのであれば、現在完了や関係代名詞よりも先に、中1内容を復習した方が効果的です。
「今、中3だから中3の問題を解く」のではなく、「どこから分からなくなったか」を探すことが、英語を立て直す第一歩になります。
4.「単語は覚えているのに点数が取れない」本当の理由
英語の勉強というと、「とにかく単語を覚えよう」となりがちです。
もちろん語彙は重要ですが、単語を100個覚えたからといって、そのまま英文が読めるようになるわけではありません。英語力には段階があります。
①単語
↓
②基本文・文法
↓
③読解・リスニング
↓
④英作文
↓
⑤活用(実際に使う)
| 段階 | 学習状態 | 確認方法 |
|---|---|---|
| ①単語 | 単語の意味・発音・つづりが分かる | 日本語⇔英語を確認 |
| ②基本文・文法 | 単語を正しい語順で並べられる | 短い英文を作る |
| ③読解・リスニング | 英文の意味・概要・要点が分かる | 読む・聞く |
| ④英作文 | 自分で英文を作れる | 日本語を見ずに書く |
| ⑤活用 | 学んだ英語を場面に応じて使える | 話す・書く・入試問題 |
たとえば、「単語テストは90点取れるのに、定期テストは50点」という生徒がいたとします。
この場合、単純に単語を増やしても点数はあまり伸びません。
つまずいているのは①の単語ではなく、②〜⑤のどこかだからです。
同じように、「文法問題はできるのに、長文になると急に読めなくなる」という生徒もいます。
これは②(基本文・文法)から③(読解)への移行、つまり知っている文法を実際の長い文章の中で使いこなす練習が足りていない状態です。
ここで理解しておいてほしいのは、
英語が苦手なのではなく、英語学習の「どこかの段階」で止まっている
という考え方です。
この視点を持つだけで、「何を勉強すればいいか分からない」から「ここを重点的にやればいい」という具体的な対策に切り替えられます。
5.英語が苦手になったときの「5ステップ立て直し法」
つまずきの場所が見えてきたら、次は立て直しです。
おすすめしたいのは、単語 → 基本文 → 文法 → 音読 → 読解・英作文という順番で確認していくことです。
STEP1 単語を確認する
意味だけで終わらせず、
見て分かる・聞いて分かる・発音できる・必要な語は書ける
ところまで確認します。
STEP2 短い基本文を作る
I play tennis.
He plays tennis.
Does he play tennis?
など、中1レベルの短い英文を自分で作れるかを確認します。
ここができなければ、中1内容まで戻って構いません。
STEP3 文法を「説明できる」状態にする
問題集で正解しただけでは、本当に理解しているとは限りません。
「なぜこの答えになるのか」を自分の言葉で説明できるところまで理解を深めます。
STEP4 音読する
単語を一つずつ日本語に訳すのではなく、意味のまとまりを意識しながら英文を読む練習をします。
読解のスピードだけでなく、リスニング力にも直結する大切なステップです。
STEP5 長文・英作文で使う
最後に、覚えた単語・文法を実際の長文や英作文の中で使ってみます。
ここまでできて初めて、
「覚えた英語」→「使える英語」
に変わっていきます。
どこかのステップを飛ばしてしまうと効果が半減してしまうため、面倒に見えても順番通りに進めることが、結果的には一番の近道になります。
6.保護者が気づきたい「英語が苦手」のサイン
点数が大きく下がってから気づくより、日常の小さなサインで早めに気づく方が、立て直しやすくなります。
| 子どもの様子 | 考えられるつまずき |
|---|---|
| 単語テストだけは点が取れる | 文法・語順・活用 |
| 教科書をスムーズに読めない | 単語・発音・英文処理 |
| 疑問文を作れない | be動詞・一般動詞 |
| 文法を「なんとなく」で選ぶ | 文法理解 |
| 長文を見ると嫌がる | 語彙・読解・処理速度 |
| 英作文を空欄にする | 基本文・語順 |
| リスニングが全く分からない | 音と単語の結び付き |
| 中3でもbe動詞と一般動詞が混ざる | 中1内容の復習 |
ここで注意してほしいのは、
定期テストの点数だけで判断しないこと
です。教科書本文やテスト範囲を暗記することで、一時的に点数が取れている場合もあります。本当のつまずきを確認したいときは、
- 初めて見る英文を読めるか
- 自分の力で短い英文を作れるか
この2つを試してみてください。
ここでつまずくようなら、見えない部分に苦手が隠れている可能性があります。
7.高校入試に向けて大切なのは「今の学年」より「つまずいた場所」
中1・中2の間は、「今回のテスト範囲は不定詞」「次は比較」というように、範囲を限定して勉強することができます。
しかし高校入試になると、状況は一変します。
中1+中2+中3
の内容がまとめて出題範囲になります。
そして現在の英語教育では、単なる文法知識だけでなく、英文から必要な情報や概要・要点を捉えたり、自分の考えを英語で表現したりする力も重視されています。2026年度の全国学力・学習状況調査でも「聞く」「読む」「書く」「話す」がそれぞれ調査対象になりました。
だからこそ、入試直前になって「とにかく長文問題をたくさん解こう」と焦っても、それだけでは十分な効果が出ないことがあります。
長文読解を支えているのも、結局は
単語 → 語順 → 基本文 → 文法
という、中1からずっと積み上げてきた土台だからです。
「英語の何が分からない?」ではなく、「どこから分からなくなった?」
英語が苦手な生徒に聞くと、「もう、全部わからない」と返ってくることがあります。
しかし実際に一緒に確認していくと、多くの場合つまずきの出発点はもっとピンポイントに見つかります。
- be動詞と一般動詞が混ざっている
- 疑問文の作り方が分からない
- 単語は分かるけれど、語順が分からない
たったこれだけのことが原因で、「全部わからない」という感覚につながっていることは珍しくありません。
中3であっても、必要なら中1に戻って構いません。
英語は積み上げ型の教科だからこそ、土台をもう一度作り直すことで、その先の理解が驚くほどスムーズに変わっていきます。
「英語が苦手だから仕方ない」で終わらせず、まずはどこからつまずいたのかを探すこと。そこが、英語を立て直す最初の一歩です。
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