「あの子は点数が上がったのに、うちの子は……」
子どもの将来を考えるほど、周りの成績が気になることはあります。テストが返ってきた日に、つい友達の点数を聞いてしまうこともあるのではないでしょうか。
ただ、他の子との点数差だけでは、わが子が何を理解し、どこで困っているのかまでは分かりません。比較を励みにする子もいれば、負担に感じる子もいます。
この記事では、他の子との比較で見落としやすいことと、本人の成長につながる成績の見方・声掛けを紹介します。順位を学習の参考にすることと、比較で子どもを責めることを分けて考えていきましょう。
1.「あの子はできるのに」と言うと、やる気につながる?
「友達も頑張っているよ」と伝えたら、勉強に向かってくれるかもしれない。そんな期待から、他の子を引き合いに出すこともあるでしょう。
しかし、比較の言葉の受け止め方は、子どもによって異なります。
「友達は90点だったよ」と聞いて、「次は自分も頑張ろう」と思うこともあれば、「頑張ったところを見てもらえなかった」と感じることも考えられます。同じ子でも、教科への自信や、その日の気持ちによって反応は変わるでしょう。
OECDのPISA 2018では、OECD平均で、仲間同士の競争が強いと感じる生徒ほど、失敗への恐れも強い傾向が見られました。この関連は、競争に好意的でない生徒で特に目立っています。
これは、学校で感じる競争と心理状態の関連を調べた結果です。保護者の比較する言葉の影響を、直接検証したものではありません。それでも、競争がどの子にも同じように働くとは限らないことを考える参考になります。
「励ましたつもりだった」で終わらず、言葉を掛けた後の表情や、その後の取り組みにも目を向けてみてください。
出典:OECD『PISA 2018 Results(Volume III)』第8章。対象:2018年調査の15歳の生徒。2019年12月3日公表。
元資料:Student co-operation and competition
2.同じ点数でも、子どもが抱えている課題は違う
点数は、学習状況を知る大切な手掛かりです。ただし、数字だけでは、間違えた原因や必要な練習までは分かりません。
例えば、同じ70点でも、答案を確かめると次のような違いがあります。
| 点数 | 答案から分かる課題 | 次に取り組むこと |
|---|---|---|
| 70点(Aさん) | 計算問題はほぼ正解。文章題で式を立てられていない | 問題文の条件を書き出し、図や線分図で整理する |
| 70点(Bさん) | 解き方は分かっているが、途中の計算ミスが多い | 途中式を残し、間違いやすい箇所を確認する |
| 70点(Cさん) | 前半は正解。時間が足りず、後半が空欄 | 時間を測って解き、解く順番や時間配分を見直す |
※理解のための架空の例です。実際には、本人の説明も聞きながら原因を確かめます。
他の子との点数差だけに注目すると、こうした違いを見落としやすくなります。
テストが返ってきたら、「何点だった?」に加えて、「どの問題で迷った?」「どこで時間がかかった?」と聞いてみましょう。
本人も原因を説明できない場合は、間違えた問題を一問だけ一緒に見直す方法もあります。家庭で判断が難しければ、その答案を学校や塾への相談に使えます。
テストの答案を見直すときは、間違いの原因を具体的に確認することが大切です。ケアレスミスと理解不足の見分け方については、「ケアレスミスが多い中学生へ|7つの原因と同じ間違いを減らす勉強法」でも詳しく紹介しています。
3.結果ばかりを比べると、努力や困りごとが見えにくくなる
点数が変わらない時期でも、学習への取り組み方が変化していることはあります。
以前は答えを写していた子が、自分で解き直すようになった。分からない問題をそのままにしていた子が、質問できるようになった。こうした変化も、点数と併せて確かめたいところです。
家庭では、例えば次のような行動に目を向けてみてください。
- 分からない問題を、自分から質問した
- 間違えた理由を確かめながら解き直した
- 前は手が止まっていた問題に、途中まで取り組んだ
- 決めた時間に勉強を始められた
一方、よい点数を取れているからといって、不安がないとは限りません。
PISA 2018では、生徒や学校の社会経済的背景を考慮しても、分析対象の71の国・地域等のうち69で、失敗への恐れが強い生徒ほど生活満足度が低い傾向が見られました。
また、両指標のデータがある68の国・地域等のうち37では、失敗への恐れが、読解力得点の高さと生活満足度の低さの双方に関連していました。
これらは関連を示した結果であり、原因を特定するものではありません。「比較すると必ず成績が下がる」とも言えません。成績と、本人がどのような気持ちで学んでいるかは、併せて見ていく必要があります。
テストの振り返りでも、「困っていることはある?」と、点数以外の話をできる余地を残しておきましょう。
出典:OECD『PISA 2018 Results(Volume III)』第13章、表III.B1.13.15および図III.13.7を説明する本文。
対象:2018年調査の15歳の生徒。2019年12月3日公表。生活満足度は0~10で回答。
元資料:Students’ self-efficacy and fear of failure
4.成績は「他の子との差」だけでなく、3つの視点で見る
では、テストの結果をどのように見ればよいのでしょうか。
文部科学省が掲載する2019年の報告書では、学校の学習評価について、学習目標に照らした評価に加え、一人一人のよい点や可能性、進歩を捉える「個人内評価」が位置付けられています。
家庭でも、この考え方を参考にできます。テストが返ってきたら、次の3つを順に確かめてみましょう。
| 視点 | 確認すること | 具体例 |
|---|---|---|
| ①目標への到達 | 学習した内容のうち、何を理解できたか | 分数のたし算・ひき算ができた |
| ②本人の変化 | 以前と比べて、解き方や取り組みがどう変わったか | 途中式を書くようになり、計算ミスが減った |
| ③次の課題 | 次に何を練習するか | 文章題の条件を図に整理する練習をする |
「前回より10点上がった」に加えて、「何ができるようになったか」まで言葉にすると、本人も変化を確かめられます。
次の課題は、一度に増やしすぎないようにしましょう。例えば、「算数を全部復習する」よりも、「今週は間違えた分数の計算を解き直す」と決めるほうが、取り掛かる内容が明確になります。
なお、テストごとに出題範囲や難易度は違います。前回との点数の上下だけで判断せず、問題の内容や答案も併せて確認してください。
次の課題が決まったら、無理なく取り組める学習計画を考えましょう。教科の優先順位については、「テスト勉強は何から始める? 5教科の「順番」の決め方」も参考にしてください。
出典:中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会『児童生徒の学習評価の在り方について(報告)』本文p.6。報告書日付:2019年1月21日。文部科学省掲載。
学習評価の考え方を示す資料であり、家庭での声掛けの効果を調べた調査ではありません。
元資料:児童生徒の学習評価の在り方について(PDF)
5.比較する言葉を、次の行動につながる声掛けに変える
他の子を持ち出す代わりに、「事実を確かめる」「本人の考えを聞く」「次の行動を一緒に決める」という流れを試してみましょう。
| つい口にしやすい言葉 | 言い換えの例 | 話し合いたいこと |
|---|---|---|
| 「○○さんはできたのに」 | 「どの問題で迷った?」 | 本人が困った箇所 |
| 「もっと頑張りなさい」 | 「今週は何から取り組もうか?」 | 次にする具体的な行動 |
| 「やればできるでしょ」 | 「今回は、間違えた理由を説明できたね」 | 実際に見られた変化 |
| 「なんでこんな点数なの」 | 「答案を見ながら、難しかったところを教えてくれる?」 | 結果に至った理由 |
これらは家庭で試すための例です。特定の言葉で成績が上がることを保証するものではありません。
ほめるときも、「すごいね」に加えて、「途中式を残していたね」「分からないところに印を付けていたね」と、実際に見えた行動を伝えてみてください。何を見てくれていたのかが具体的になります。
OECDの報告書では、知能は変えられるという考え方を捉えた「成長マインドセット」が、OECD平均で、習得への意欲や自己効力感、学習目標の設定などと正の関連を、失敗への恐れとは負の関連を示していました。
ただ、「努力すれば伸びる」と伝えるだけで、本人の困りごとが解決するわけではありません。「どの方法なら取り組めそうか」まで一緒に考えることを大切にしたいところです。
本人が落ち込んでいるときは、すぐに改善策を決めなくても構いません。まず話を聞き、落ち着いてから振り返る方法もあります。
出典:OECD『PISA 2018 Results(Volume III)』要約。対象:2018年調査の15歳の生徒。2019年12月3日公表。
成長マインドセットは、知能はあまり変えられないという記述への回答を基に把握されています。
元資料:PISA 2018 Results(Volume III)
6.順位や受験の情報が気になるときは、どうすればいい?
受験を考えると、順位や模試の結果は気になるものです。学習計画を立てるための材料として、参考にして構いません。
その際は、数字を見て終わらず、「次に何をするか」まで考えましょう。
例えば、同じ順位でも、志望校、教科ごとの得意・不得意、受験までの期間によって、取り組む内容は変わります。不安があるときは、学校や塾で次のように相談してみてください。
- 志望校に向けて、今優先したい単元はどこですか
- 基礎の復習と応用問題の練習は、どちらを増やすとよいですか
- 家庭学習で取り組む内容を、どこまで絞ればよいですか
相談の際は、答案、普段使っている教材や学習の記録、本人の希望を用意しておくと、話を具体化しやすくなります。
今治市で進学先を考える場合も、周りの家庭の経験談だけで判断せず、愛媛県教育委員会や志望校が公表する、該当年度の情報を確認しましょう。過去の受験経験を、そのまま今年度にも当てはめないことが大切です。
「周りより遅れていないか」という不安を、「今、何を優先すればよいか」という相談に変えていくと、家庭で支える内容も整理できます。
7.まとめ|今日から「何点だった?」に、もう一つ質問を足そう
他の子との点数差だけでは、わが子の課題や成長は捉えきれません。競争への受け止め方も、子どもや状況によって異なります。
テストの結果を見るときは、次の3つを確かめてみてください。
- 学習した内容を、どこまで理解できたか
- 以前の本人から、何が変わったか
- 次に、何に取り組むか
次にテストが返ってきたら、「何点だった?」に続けて、もう一つ聞いてみませんか。
「前より分かるようになったところはある?」
「次は何をできるようにしたい?」
つい比べてしまった自分を責める必要はありません。本人の話と答案に戻り、できたことと次の課題を一緒に見つけることから始めてみましょう。
学習の進め方やテストの振り返りに迷ったときは、BONDSへの相談もご検討ください。
参考資料
- 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会『児童生徒の学習評価の在り方について(報告)』2019年1月21日、文部科学省掲載。
報告書PDF - OECD『PISA 2018 Results(Volume III): What School Life Means for Students’ Lives』。2018年調査、2019年12月3日公表。
報告書・要約
第8章:生徒の協力と競争
第13章:自己効力感と失敗への恐れ
※PISAは15歳の生徒を対象とする国際調査です。本記事では家庭での関わりを考える参考として紹介しており、結果をすべての年齢にそのまま当てはめるものではありません。


