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OECD学習到達度調査で日本が3分野すべてでトップ!

高校1年生の読解力・数学・科学は世界トップレベル。その一方で見えてきた「新たな課題」

2026年9月、OECD(経済協力開発機構)が「PISA2025」の結果を公表しました。

PISAとは、世界の15歳の生徒を対象に、学校で身につけた知識を実生活の中で活用する力を測定する国際的な学習到達度調査です。
今回の調査には91の国と地域から約76万人が参加しました。

そして日本は、「科学」「読解」「数学」の3分野すべてで、OECD加盟国の中で1位という結果になりました。
これは、PISAの調査開始以来、日本にとって初めてのことです。

では、日本の高校1年生には具体的にどのような力があるのでしょうか。
そして、この結果を「日本の教育は成功している」とだけ受け止めてよいのでしょうか。

今回はPISA2025の結果を詳しく見ながら、これからの子どもたちに必要な学力について考えてみます。


1.PISAとは何か、そして日本の成績

PISAは、OECDが実施する「生徒の学習到達度調査」です。
対象となるのは主に15歳の生徒で、日本では多くが高校1年生にあたります。

ここで重要なのは、PISAが単なる「学校のテスト」ではないということです。

例えば数学なら、公式を覚えているかどうかではなく、
現実の場面を数学的に捉え、必要な情報を読み取り、数量関係を考え、複数の方法を比較し、答えが妥当かを判断するといった力が求められます。

つまりPISAが見ているのは、「知識をどれだけ覚えているか」だけではなく、「その知識を使って考えられるか」という力なのです。
これは、これからの高校入試や大学入試を考えるうえでも重要なポイントです。

今回、日本の平均得点は次のようになりました。

分野日本の得点OECD平均OECD加盟国内順位全参加国・地域内順位
科学的コンピテンシー538点482点+56点1位5位
読解力503点461点+42点1位4位
数学的リテラシー525点463点+62点1位5位

3分野すべてでOECD加盟国トップという非常に大きな成果です。

特に数学では日本525点に対してOECD平均は463点と、62点もの差がついています。
科学でも56点、読解力でも42点の差があり、日本の15歳が国際的に見ても高い水準の学力を身につけていることが、この得点差からもうかがえます。

ただし注意したいのは、ニュースで目立つ「日本が1位」という表現が、正確には「OECD加盟国の中で1位」だという点です。

PISAにはシンガポールや台湾、マカオ、中国の一部地域など、OECD非加盟の国・地域も参加しています。
それらを含めた全参加国・地域で見ると、日本の順位は科学5位・読解4位・数学5位となります。

したがって「日本がすべての国・地域を含めて世界1位」という意味ではありません。

しかし、世界トップグループに位置していることは間違いなく、順位の数字だけでなく得点の中身を見ても、日本の高校1年生の学力の高さは裏付けられています。


2.なぜ高いのか ― 読解力・数学・科学それぞれの強さ

今回の結果の中でも、塾の立場から特に注目したいのが「読解力」です。

読解力というと「国語が得意かどうか」だけの問題だと思われがちですが、実際にはそうではありません。
数学の文章問題、理科の実験問題、社会の資料問題、高校入試の長文問題――これらにもすべて「読む力」が必要です。

問題文を正確に読めなければ何を求めればいいのかが分かりませんし、条件を読み落とせば計算が正しくても答えを間違えます。

つまり、読解力は国語だけの力ではなく、5教科すべての土台になる力なのです。
日本の生徒が読解力で世界トップレベルにあるということは、他の教科の学びを支える基盤がしっかりしていることの表れとも言えるでしょう。

数学と科学についても、単なる公式暗記や計算練習では測れない力が試されています。

日本では数学で最低限の習熟度とされるレベル2以上に84%の生徒が到達しており、
レベル5・6という高い習熟度に達した生徒も22%に上ります(OECD平均8%)。
科学でも、レベル2以上の生徒が89%(OECD平均74%)、レベル5・6の高い習熟度に達した生徒は17%(OECD平均7%)と、
いずれも大きく平均を上回っています。

数学で問われているのは、「この状況を数学的にどう表現するか」「どの方法で解決するのが適切か」「出した答えは本当に正しいのか」といった判断力です。

科学でも同様に、「科学的に問いを立てる」「データを読み取る」「証拠をもとに判断する」「科学的な説明を評価する」といった力が求められています。

単に公式や用語を暗記するだけの学習では、こうした問いに対応することはできません。
日常生活の中で「なぜそうなるのか」「他の考え方はないか」と問い直す習慣の積み重ねが、今回の好成績につながっていると考えられます。

分野最低限の習熟度(レベル2以上)高い習熟度(レベル5・6)
数学(日本 / OECD平均)84% / ―22% / 8%
科学(日本 / OECD平均)89% / 74%17% / 7%

3.デジタル・AI活用という新しい視点

PISA2025では、
従来の科学・数学・読解だけでなく、デジタル環境の中で学び、問題を解決する力を見る新しい領域「ラーニング・イン・デジタルワールド」も導入されました。日本はこの新分野でも非常に高い結果を示しています。

これからの子どもたちには、知識を覚えているだけでなく、インターネットから情報を探し、その情報が正しいかを判断し、デジタルツールやAIも活用しながら自分で問題を解決する力が求められます。

「勉強ができる」から「学び続けられる」へ、教育の重点は少しずつ変わっているのです。

一方で意外な弱点も見えています。
日本は学力面ではトップクラスですが、学校の勉強でのAI利用頻度はOECD加盟38か国の中で最下位でした。

一見「日本のAI教育は遅れている」という話に見えますが、単純にそう結論づけることもできません。
AIは便利だから使えばよい、というものではなく、使い方次第で効果は大きく変わってきます。

例えば、「分からない問題をAIに聞いて答えだけ教えてもらう」という使い方を続ければ、自分で考える機会を失ってしまう可能性があります。
一方で、「自分の答案をAIに分析してもらう」「別の解き方を比較する」「自分の考えの弱点を指摘してもらう」といった使い方なら、AIは学習を深める道具になります。

OECDも、AIやデジタル機器については「使う・使わない」という単純な二択ではなく、明確な目的を持ち、節度をもって利用することの重要性を指摘しています。重要なのは、AIを使うか使わないかではなく、「どう使うか」なのです。


4.世界的な学力低下と、日本国内で広がる格差

日本の結果だけを見ると「日本の教育は順調だ」と思ってしまいますが、世界全体を見ると少し違った景色が見えてきます。

OECD全体では、2025年の数学的リテラシーと読解力の平均得点がPISA開始以来の低い水準となりました。
さらにOECD加盟国では、5人に1人の15歳が数学・読解・科学の3分野すべてで低習熟度レベルとなっており、この割合は2022年の16%から上昇しています。つまり今回のPISAは「日本が高い」というニュースであると同時に、「世界的に基礎学力の低下が進んでいる」というニュースでもあるのです。

そして、日本国内にも見過ごせない課題があります。
日本は平均点では非常に高いものの、すべての子どもが高い学力を身につけているわけではありません

OECDの分析では、日本でも2022年から2025年にかけて、数学・読解・科学のいずれでも上位10%と下位10%の得点差が広がりました。
2015年と比較すると、レベル2未満の低成績層の割合は数学で5ポイント、読解で6ポイント増加しています(科学は大きな変化なし)。
「日本全体の平均は高い。しかし、学力の二極化には注意が必要」というのが実情です。

比較項目内容
OECD加盟国の低習熟度層2022年16% → 2025年 5人に1人(約20%)に上昇
日本の得点差(上位10%と下位10%)数学・読解・科学のいずれも拡大
日本の低成績層(レベル2未満・2015年比)数学+5pt、読解+6pt、科学はほぼ横ばい

だからこそ、「日本はPISAで1位だから、うちの子も大丈夫」とは限りません。
大切なのは、その子自身がどこでつまずいているのかです。

数学なら計算力・文章題・関数・図形・データ活用・数学的な説明のどこが弱いのか、
国語なら語彙・文の構造・要旨把握・記述・資料の読み取りのどこに課題があるのか
――「勉強時間が足りない」だけでなく、「何ができていないのか」を具体的に分析することが、これからますます重要になります。


5.これからの入試・学び方

今回のPISAの結果は、高校入試とも無関係ではありません。
現在の高校入試では、「知識を覚えているか」だけでなく、知識を使って考え、説明し、判断する力が重視される傾向があります。

数学なら「資料から必要な情報を読み取り、数学的に処理する」問題、国語なら「複数の資料を比較し、自分の考えを記述する」問題など、理科・社会でも「知識+資料の読み取り+判断」が必要になります。

つまりこれからの受験勉強では、「覚える」→「解く」→「説明する」という学習が重要になります。

「解けたかどうか」だけで一喜一憂するのではなく、「なぜその解き方を選んだのか」を自分の言葉で説明できるかどうかが、これからの学びの質を左右すると言ってよいでしょう。

生成AIが急速に普及する中、「これからはAIが勉強をしてくれるから、勉強しなくてもいいのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、むしろ逆です。

AIが答えを出してくれる時代だからこそ、「その答えは本当に正しいのか?」と判断する力が必要になります。

AIに質問するためにも質問を考える力が、AIの答えを理解するためにも読解力が、AIが出した数字を判断するためにも数学的な力が、AIが示した科学的な説明を評価するためにも科学的思考力が必要です。

つまり、読解力・数学・科学というPISAの基礎学力は、AI時代になってもむしろ重要性を増していると考えられます。

家庭でできることは、勉強量を増やすことよりも、子どもが自分で考える時間を増やす声かけの工夫です。

よくある声かけおすすめの声かけ
答えは何?どう考えたの?
何点だった?どこが一番難しかった?
早く宿題しなさい!今日は何からやる?

こうした小さな声かけの違いが、「やらされる勉強」から「自分で考える勉強」へのきっかけになります。


まとめ|日本の1位は「ゴール」ではなく「スタート」

PISA2025で、日本は科学・読解・数学の3分野すべてでOECD加盟国1位となりました。
これは、日本の子どもたちが国際的に見ても高い学力を持っていることを示す、大きな成果です。

しかし、その一方で、日本のすべての子どもが高い学力を身につけているわけではない」という現実もあります。さらに、AIやデジタル技術の急速な発展によって、「何を知っているか」だけではなく、「知っていることを使って、どう考えるか」がますます重要になっています。

OECDも、AIやデジタル機器については「使う・使わない」という単純な二択ではなく、明確な目的を持ち、節度をもって利用することの重要性を指摘しています。

これからの教育で大切なのは、勉強時間を増やすことだけではありません。
自分で考える。
自分で調べる。
自分の答えを説明する。
間違いから学ぶ。
そして、必要なときにはAIやデジタルツールも上手に使う。
こうした学び方を身につけることです。

日本のPISA1位という結果は、子どもたちの努力と日本の教育の強みを示しています。

だからこそ、この結果を単なる「ランキング」で終わらせるのではなく、「これからの子どもたちに、どんな力を育てていくのか」を考えるきっかけにしたいものです。学力の「平均点」だけを見るのではなく、一人ひとりの子どもが、自分の力で学び続けられるようになること。

それこそが、これからの教育に求められる本当の「学力」なのではないでしょうか。

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ikeda

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