高校数学で急につまずくのはなぜ? 数学Ⅰ・Aで差がつくポイントと勉強法

「中学までは定期テストで80点以上取れていたのに、高校最初のテストで見たこともない点数を取ってしまった」
「授業を聞いているときは分かるのに、家で問題集を開くと手が止まる」
「公式はちゃんと覚えたのに、テストになるとどれを使えばいいのか分からない」

高校に入学してしばらく経つと、こうした相談が一気に増えてきます。中学では数学が得意だった生徒ほど、ショックも大きいようです。

特に高校1年生で学ぶ数学Ⅰ・Aは、その後の高校数学すべての土台になる科目です。ここでのつまずきを放置すると、数学Ⅱ・B・C、そして大学入試へと進んだときに苦労することになりかねません。

では、なぜ中学では数学ができていた生徒が、高校に入ると急につまずいてしまうのでしょうか。今回は、数学Ⅰ・Aで差がつきやすいポイントと、数学を苦手科目にしないための勉強法についてお話しします。


1.数学が苦手な高校生は、決して少なくない

まず知っておいてほしいのは、高校数学に苦戦しているのはあなただけではない、ということです。

ベネッセ教育情報が2025年に公表した大学生へのアンケートでは、高校時代に最も苦手だった教科の1位が「数学」、2位が「英語」でした。そして、苦手教科の成績を入試までに上げられた人は全体で約42%にとどまっています。数学は一度分からなくなると、その後の内容にも響いてくる「積み上げ型」の教科だからです。

大学入学共通テストの平均点を見ても、高校数学が多くの受験生にとって高い壁であることが分かります。

年度数学Ⅰ・A平均点(100点満点)備考
2022年度37.96点共通テスト史上最低点
2023年度55.65点難易度の調整が入る
2024年度51.38点ここまで旧課程
2025年度53.51点新課程初年度
2026年度47.20点受験者 約343,000人(前年比 -6.31点)

大学入試センターによると、2026年度は約34万3千人が受験し、平均点は47.20点でした。全国の受験生がしっかり対策をして臨んでも、平均点が50点に届かない年が珍しくないのです。


もちろん平均点はその年の問題の難易度にも左右されるので、「平均点が下がった=高校生の数学力が落ちた」と単純には言えません。ただ、高校数学では計算方法を知っているだけでは足りず、問題文から必要な情報を読み取り、適切な考え方を選ぶ力が求められている、ということはよく表れていると思います。


2.中学数学と高校数学は、そもそも何が違うのか

「中学のときと同じように勉強しているのに点が取れない」という場合、中学と高校で求められる力の違いを知らないまま走っている可能性があります。

高校に入ると、教科書のページ数も授業の進み方も中学の2〜3倍になります。定義や公式、専門用語が一度にどっと増え、扱う内容も具体的な数から文字や記号が中心の抽象的な世界へと移っていきます。

そして何より大きいのが、「覚えた解き方を使う」から「使う解き方を自分で選ぶ」への変化です。

中学では「この単元ならこの公式」と見当がつく問題が多く、パターンを覚えておけばある程度得点できました。ところが高校では、一つの問題の中に複数の考え方が登場し、問題文も長くなります。解くときの流れは、おおよそ次のようになります。

問題を読む → 条件を整理する → 何を求めるのか確認する → 使える公式・考え方を選ぶ → 式・グラフ・図に表す → 計算する → 答えが条件に合っているか確かめる

注目してほしいのは、「計算する」が流れの後半にあることです。数学が苦手になると「数学=計算」と思いがちですが、高校数学では計算に入る前の段階がとても重要になります。

文部科学省の高等学校学習指導要領でも、基本的な概念や原理・法則を理解することに加えて、物事を数学的に捉え、論理的に考え、数学的な表現を使って的確に表す力を育てることが重視されています。

中学までの勉強で意識しやすいこと高校数学でさらに大切になること
公式を覚える公式の意味を理解する
計算する条件を整理する
例題をまねる解法を選ぶ
答えを出す答えを検証する
解き方を覚える別の問題にも応用する

たとえるなら、高校数学は「やり方を覚えて当てはめる作業」ではなく、「手持ちの道具(公式や定義)の中から最適なものを選び、筋道立てて組み立てるパズル」です。「授業では分かったのに、テストになると解けない」という現象が起きるのは、まさにこのためです。


3.数学Ⅰ・Aで差がつく5つのポイント

では、数学Ⅰ・Aの中でも特に差がつきやすく、後々の苦手意識につながりやすい分野を5つ見ていきましょう。

① 数と式 ―「簡単そう」が一番危ない

高校数学の最初に習う単元で、展開・因数分解、実数、平方根、一次不等式、絶対値を含む方程式・不等式などを扱います。中学の内容と重なる部分もあるので「ここは楽勝」と油断しがちですが、実は高校数学全体の計算の土台です。

たとえば因数分解に時間がかかると、二次方程式でも二次関数でも時間が足りなくなります。この単元は「できる」だけで満足せず、「速く・正確にできる」ところまで仕上げておきたいところです。

② 二次関数 ― 数学Ⅰ最大の分岐点

高校数学で最初にぶつかる大きな壁が二次関数です。中学で習った y=ax² とは比べものにならないほど内容が広がり、平方完成、グラフの平行移動・対称移動、定義域が限られたときの最大・最小、軸や定義域が動く場合分け、二次方程式・二次不等式との融合……と、多くの内容がつながっていきます。

ここで鍵になるのが、式とグラフを結びつけて考える力です。たとえば y=x²-4x+5 という式を見たら、平方完成して y=(x-2)²+1 と変形し、「頂点は(2, 1)、軸は x=2」とグラフを頭に思い浮かべられるかどうか。式からグラフへ、グラフから性質へと自由に行き来できるかが明暗を分けます。

③ 図形と計量(三角比)― sin・cos・tan で混乱しやすい

sin(サイン)、cos(コサイン)、tan(タンジェント)という新しい記号が一気に登場します。直角三角形での定義から始まり、0°〜180°への拡張、正弦定理、余弦定理、三角形の面積、空間図形への応用へと進んでいきます。

この分野でよく聞くのが「公式は覚えているけど、どれを使えばいいのか分からない」という声です。大切なのは丸暗記ではなく、分かっている辺や角、求めたいものを図に書き込み、そこから使える公式を判断する習慣です。中学で習った平面図形や三平方の定理の知識も同時に問われます。

④ 場合の数・確率 ― 計算より「数え方」で差がつく

公式を覚えただけではまったく太刀打ちできない、思考力がそのまま問われる分野です。「順番を考えるのか」「同じものとして扱うのか」「重複して数えていないか」「全体の場合の数はいくつか」といった判断を、問題ごとにしていく必要があります。

P(順列)なのか C(組合せ)なのかだけで判断しようとすると、問題が少し変わっただけで解けなくなります。苦手な人ほど、いきなり公式に当てはめるのではなく、樹形図を書く、小さい数字で試す、具体的に数えてみる、というところから始めてみてください。「もれなく、重なりなく」数え上げる力は、そうした地道な作業の中で育っていきます。

⑤ 集合・命題 ― 計算が得意でもつまずく

集合の記号(∩、∪ など)やベン図、必要条件・十分条件、逆・裏・対偶、背理法による証明などを扱います。ここで試されるのは計算力ではなく、言葉と論理の厳密さです。「計算問題は得意なのに、命題になると分からない」という生徒がいるのはこのためです。

この論理的な考え方は、大学入試で記述答案を書くときの基礎にもなります。

分野特に必要な力つまずきやすいところ
数と式計算力展開・因数分解・平方根
二次関数式とグラフを結ぶ力平方完成・最大最小
図形と計量図から条件を読む力三角比・正弦定理・余弦定理
場合の数・確率条件整理・数え上げ順列・組合せ・確率
集合・命題論理的思考必要条件・十分条件・対偶

4.つまずく人に共通する「勉強のクセ」

数学が苦手になる原因は、能力だけで決まるものではありません。むしろ勉強の仕方が影響していることがよくあります。次の項目に心当たりがないか、チェックしてみてください。

□ 答え合わせをして、丸つけだけで終わっている
□ 公式の意味や成り立ちを考えず、丸暗記している
□ 解説を読んで分かったら、次の問題へ進んでいる
□ 間違えた問題を、日を置いて解き直していない
□ 分からない単元を「あとでやろう」と放置している
□ テスト直前にしか数学を勉強しない
□ 答えを見れば分かるが、自力では解けない

3つ以上当てはまったら要注意です。勉強量を増やす前に、まず勉強のやり方を見直したほうがいいかもしれません。

特に気をつけたいのが「解説を読んだら分かった」という状態です。数学の理解には、「分かる → 思い出せる → 解ける → 応用できる」という段階があります。授業を聞いたり解説を読んだりして納得できたのは、まだ最初の「分かる」の段階。解説を閉じて自分で思い出し、何も見ずに解けて初めて「解ける」になり、違う問題でも使えるようになって「応用できる」に到達します。

テストで必要なのは、何も見ない状態から自分で考えて解けることです。高校数学では、勉強した時間の長さだけでなく「どの段階まで進めたか」が問われます。


5.つまずいたら、どこまで戻ればいい?

成績が伸びないと「もっと難しい問題集をやらなきゃ」と考えてしまいがちです。でも、実は逆のことも多いのです。難しい問題に進むより、前に戻ったほうが早い。これが数学という教科の大きな特徴です。


根本の原因が中学数学にあるなら、高校の問題集を何度解き直しても解決しません。自分のつまずきに合わせて、どこまで戻るべきか確認してみましょう。

高校数学でのつまずき戻って確認したい中学の内容
数と式の計算に時間がかかる・ミスが多い中3:展開・因数分解の基本公式
ルートが絡むと計算が止まる中3:平方根の性質と有理化
二次関数のグラフや最大・最小が分からない中2:一次関数のグラフと式 → 中3:y=ax² の性質
三角比の値が覚えられない中3:三平方の定理・特別な角をもつ直角三角形の比
三角比の図形問題が解けない中2・中3:図形の性質、合同・相似、円、三平方の定理
場合の数・確率の式が立てられない中2:樹形図や表を使った数え上げと確率の基本
集合・命題の必要・十分条件で混乱する中学全般:図形の証明問題、条件を整理する練習

たとえば二次関数が苦手でも、二次関数の問題を100問解けばいいとは限りません。平方完成で毎回計算ミスをしているなら、因数分解や式の計算まで戻ったほうがいい場合もあります。三角比が分からないなら、相似や三平方の定理がきちんと理解できているかを確かめます。

高校数学は階段のようなものです。中1の文字式・方程式、中2の連立方程式・一次関数、中3の展開・因数分解・平方根・二次関数と積み上がってきた先に、高1の数と式・二次関数・三角比があり、さらにその先に数学Ⅱ・B・Cが続いています。途中の段が抜けたまま上に進もうとすると、どこかで必ず苦しくなります。

「高校生にもなって中学の教科書を開くなんて」と恥ずかしく感じるかもしれません。でも、原因になっている中学数学の穴をピンポイントで埋めることこそ、高校数学を克服する一番の近道です。


6.数学Ⅰ・Aで差をつける勉強法

高校数学を攻略するには、「分かる」から「一人で解ける」へと引き上げる習慣が必要です。キーワードは「解きっぱなしにしない」こと。具体的には、次の6つのステップを意識してみてください。

  1. 理解する:授業や教科書、解説で「なぜその解き方になるのか」を納得する
  2. 自力で解く:ヒントを見ずに、自分で答案を書いてみる
  3. 間違える:間違いは失敗ではなく、勘違いや弱点を見つけるチャンス
  4. 原因を確認する:計算ミスか、公式を知らなかったのか、方針そのものが違ったのか
  5. 何も見ずに解き直す:解説を閉じて、最初から最後まで自力で解ききる
  6. 数日後にもう一度解く:本当に身についたかを確認する

中でも大事なのが4つ目の「原因を確認する」です。間違いを全部「ケアレスミス」で片づけてしまうと、同じミスを何度でも繰り返します。原因によって、取るべき対策は変わってきます。

間違いの原因対策
計算ミス途中式を省略しすぎない
公式を忘れた意味とセットで覚える
問題文を読み違えた条件に線を引く
解法が浮かばない例題との共通点を確認する
前の単元が分からない中学・前の単元まで戻る

1週間単位で復習のリズムをつくる

進度が速く量も多い高校数学では、テスト前の一夜漬けはまず通用しません。短い時間でもいいので、普段から次のようなサイクルを回していきましょう。

タイミングやること
授業当日教科書の例題・基本問題をその日のうちに自力で解く
翌日間違えた問題だけ解き直す
週末その週に間違えた問題をまとめて解き直す
テスト2週間前学校のワークや問題集の標準〜応用問題に取り組む
テスト1週間前チェックをつけた弱点問題を中心に復習する
テスト直前苦手問題・公式・注意点を最終確認する

特におすすめなのは、授業を受けたその日のうちに1〜2問だけでも自力で解いてみることです。たったそれだけでも、「授業では分かった」が「自分でも解けた」に変わります。


7.数学Ⅰ・Aの差は、高2・高3でさらに広がる

「数学Ⅰ・Aは高1の科目だから、学年が上がればリセットされる」ということは、残念ながらありません。高校数学のカリキュラムは、しっかりとした積み上げ構造になっているからです。


数と式で身につける式の処理力は、数学Ⅱ・Ⅲの複雑な式変形や複素数、極限へとつながります。二次関数の考え方は、図形と方程式や、数学Ⅱの微分・積分の基礎そのものです。三角比は数学Ⅱの三角関数や数学Bのベクトルへ、場合の数・確率は数学Bの統計的な推測や入試の応用問題へと発展します。そして集合・命題で鍛える論理的思考は、数学全体を支える力になります。

高1で生まれた小さな苦手意識やあいまいな理解は、学年が上がるにつれて大きな溝になっていきます。だからこそ、「分からない」と感じたその瞬間に立ち止まり、原因を突き止めて手を打つことが何より大切なのです。


学習塾BONDSから、高校生・保護者の皆さまへ

高校数学で思うような結果が出ないとき、つい「勉強時間を増やさなきゃ」「難しい参考書を買わなきゃ」と考えてしまいます。でも、その前にぜひ確かめてほしいのが、「どこから分からなくなったのか」です。

二次関数で苦戦しているように見えても、丁寧にたどっていくと、原因は中3の因数分解だった、平方根の計算だった、中2の一次関数だった、ということは少なくありません。

今治市の学習塾BONDSでは、問題の解き方や答えをただ教え込む指導はしていません。生徒一人ひとりの答案をよく見て、「どこまで戻れば自力で解けるようになるのか」を一緒に確認しながら、基礎の土台から積み直していきます。

一度苦手意識を持つと、数学はどうしても難しく感じてしまうものです。それでも、つまずいている場所を見つけて一つずつ積み直していけば、解ける問題は確実に増えていきます。

「高校に入ってから数学が急に難しくなった」「勉強しているのに成果が出ない」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。原因までさかのぼり、「自分で解ける楽しさ」を取り戻すお手伝いをいたします。

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