2026年、愛媛県の教育はどう変わる?
―「教育立県えひめ」が目指す子どもたちの未来
「愛媛県の教育は、これからどう変わっていくのだろう」
「高校入試は今までと同じ感覚で考えていて大丈夫なんだろうか」
「結局、子どもにはどんな力をつけさせればいいのか」
中学生や高校生のお子さんを持つ保護者にとって、教育政策というのは一見遠い話に思えるかもしれません。
けれど実際には、私たちの暮らしにかなり近いところで動いています。
授業の中身がどう変わっていくのか。
ICTやAIがどんな形で使われていくのか。
不登校への対応はどう変化していくのか。
高校でどんな力を育てようとしているのか。
そして、これからの入試で何が求められるようになるのか。
こうした変化の背景には、愛媛県が進めている教育政策があります。
愛媛県は現在、「教育立県えひめ」を掲げ、教育を県の未来を支える大きな柱の一つとして位置づけています。
2026年の今、愛媛県の教育はまさに転換点を迎えていると言っていいでしょう。
今回は、愛媛県が公表している最新の教育政策やデータをもとに、
「愛媛の教育は何を目指しているのか」
「子どもたちにこれから必要になる力とは何か」を、保護者の方にも分かりやすいようにまとめてみます。
1. 愛媛県が目指す「教育立県えひめ」とは
愛媛県は、「学校教育を充実させる」ということにとどまらず、教育そのものを県の未来を支える基盤として位置づけています。
「愛顔あふれる『教育立県えひめ』の実現」を掲げ、
現在は2023〜2026年度の4年間を計画期間とする第3期「愛媛県教育振興に関する大綱」を進めているところです。
この背景には、愛媛県が直面している大きな社会の変化があります。
| 愛媛県が直面する社会変化 |
|---|
| 少子化 |
| 人口減少 |
| 若者の県外流出 |
| デジタル化の進展 |
| AIの急速な発展 |
| 子どもたちの価値観の多様化 |
| 不登校など教育課題の複雑化 |
これまでのように「学校で勉強して、いい高校・大学に進学する」というだけの教育では、こうした変化に対応しきれなくなってきています。
だからこそ愛媛県は、「どんな知識を持っているか」だけでなく、
「その知識を使ってこれからの社会をどう生きていくか」を重視する方向へと舵を切っています。
愛媛県の教育政策には、次の7つの基本方針があります。
| No. | 基本方針 |
|---|---|
| 1 | 未来を切り拓くたくましい子どもたちの育成 |
| 2 | 夢の実現に資する魅力あふれる学校づくり |
| 3 | 一人ひとりを見つめる特別支援教育の充実 |
| 4 | 全ての子どもたちの自信を育み、安心して学べる環境の整備 |
| 5 | 教職員の働きがいのある魅力的な職場づくり |
| 6 | 社会総がかりで取り組む教育の推進 |
| 7 | スポーツ・文化の振興と生涯学習の推進 |
こうして並べてみると分かるように、「学力だけを伸ばす教育」を目指しているわけではないことが見えてきます。
2. これからの愛媛県教育で鍵を握る「自分で学ぶ力」
これからの教育を考えるうえで、とくに注目しておきたいのが「主体的に学ぶ」という考え方です。
愛媛県の最新のKGIレポートでは、児童生徒が「課題の解決に向け、自分で考え自分から取り組む」ことに関する指標が設定されています。
中学生の指標は、全国平均を100とした場合、令和7年度で98.0ポイント。県はこれを令和8年度までに102.0ポイントまで引き上げることを目標としています。
この数字から分かるのは、
愛媛県が「勉強時間の長さ」だけでなく、「自分から学習に向かう子どもをどう増やすか」を重要な課題として捉えているということです。
これは家庭学習にも大きく関わってきます。
「宿題やった?」「早く勉強しなさい」「テスト近いんだから勉強しなさい」と言われて動く子どもと、
「今日は数学のここをやろう」「昨日間違えたところをもう一度解いてみよう」と自分で考えて動く子ども。
長い目で見れば、どちらが強いかは言うまでもありません。
もちろん、最初から一人で勉強を進められる子どもばかりではありません。
だからこそ大切なのは、「勉強させる」のではなく「勉強の仕方を身につけさせる」という発想の転換です。
3. 「勉強時間」だけを追いかけてはいけない理由
成績が伸び悩むと、つい「もっと勉強時間を増やそう」と考えがちです。もちろん一定の学習量は必要ですが、同じ2時間勉強しても、その中身によって成果はまったく違ってきます。
| Aさんの勉強の流れ | Bさんの勉強の流れ | |
|---|---|---|
| 1 | 問題を解く | 問題を解く |
| 2 | 丸つけをする | 丸つけをする |
| 3 | 間違えた問題の答えを見る | なぜ間違えたのか考える |
| 4 | 次の問題へ | 解き方を確認する |
| 5 | もう一度、自力で解く | |
| 6 | 次に同じ間違いをしない方法を考える |
同じ「2時間」でも、中身はまったく違います。これから大切になるのは、「何時間勉強したか」ではなく「その時間で何を考えたか」です。
これは高校入試対策においても、非常に重要なポイントになります。
4. ICT・AI時代、子どもたちは何を学ぶのか
もう一つの大きな変化が、ICTの活用です。
愛媛県では1人1台端末を活用した学習環境の整備を進めており、端末更新やネットワーク環境、校務DX、端末の利活用などについても計画が進められています。さらにKGIレポートでは、県独自のCBTシステムなどICTを活用しながら、児童生徒の学習進度や個性に合わせた学びを深めていくことが取り組みとして示されています。
ここで押さえておきたいのは、「タブレットが使えるようになること」そのものが目的ではないという点です。
ICTはあくまで道具であり、
- 自分の理解度を確認する
- 苦手な分野を繰り返し学習する
- 調べる
- 情報を整理する
- 自分の考えをまとめる
- 他者に発表する
といった学びのために活用されるものです。
そしてAIの普及によって、この傾向はさらに強まっています。
AIに質問すればすぐに答えが返ってくる時代だからこそ、
「答えを知っていること」よりも「その答えが本当に正しいのかを判断できること」の重要性が増しています。
これは、これからの子どもたちにとって大きなテーマになるでしょう。
5. 「AIに答えを聞く」だけでは本当の学力にならない
数学の問題をAIに入力すれば解答は出てきますし、英作文を入力すれば文章を直してくれます。
しかし、それだけで学力が身についたと言えるでしょうか。
大切なのは「AIに答えを出してもらうこと」ではなく、「AIを使いながら自分の理解を深めること」です。
「この問題を解いて」と聞くのではなく、「自分はここまで考えたけれど、どこが間違っている?」と尋ねてみる。
あるいは「この解き方とは別の方法はある?」と聞いてみる。
こうした使い方をすれば、AIは「答えを出す機械」ではなく「一緒に考える相手」になってくれます。
これからの教育では、ICTを使う力と自分で考える力、その両方が求められるようになっていくはずです。
6. 不登校への対応も変わってきている
愛媛県の教育を考えるうえで、避けて通れないテーマが不登校です。
県の教育政策でも不登校への対応は重要な課題として位置づけられており、総合計画の中でも、不登校への対応やICT教育の推進が教育上の課題として挙げられています。
ここで大切なのは、「学校に行けない=学べない」ではないという考え方です。
| 子どもによって理由はさまざま |
|---|
| 学校という環境が合わない |
| 人間関係に悩んでいる |
| 集団生活に疲れている |
| 学習についていけない |
| 心身の疲れがある |
| 将来への不安を抱えている |
「どうして学校に行かないの?」と問い続けるだけでは、解決に近づかないこともあります。
これからは「どうすればこの子が安心して学び続けられるか」という視点が、ますます重要になっていくでしょう。
7. 「一人ひとり違う」が教育の前提になる時代へ
7つの基本方針の一つに「一人ひとりを見つめる特別支援教育の充実」があります。
これは特別支援学級に在籍している子どもだけの話ではありません。
子どもにはそれぞれ、得意なこと・苦手なこと・理解するスピード・集中できる時間・記憶しやすい方法・モチベーションが上がるきっかけがあります。
「クラス全員に同じ方法で教える」というやり方だけでは対応しきれない子どももいます。
だからこそ「できない」のではなく、「今の学び方が合っていないのではないか」という視点が大切になります。これは家庭学習でも同じことが言えます。
8. 「安心して学べる環境」も教育政策の重要な柱
愛媛県は「全ての子どもたちの自信を育み、安心して学べる環境の整備」を基本方針の一つに掲げています。
これは非常に重要なポイントです。
なぜなら、安心できない状態では、子どもは十分に学ぶことができないからです。
「失敗したら怒られる」「テストの点数が悪いと責められる」「友達と比べられる」「何をやっても認めてもらえない」
―そんな環境では、子どもは挑戦することを避けるようになってしまいます。
逆に、「間違えてもいい」「分からないと言っていい」「前より少しできるようになった」という経験を積み重ねられれば、学習に向かう力は自然と育っていきます。
教育政策の中で「自信」や「安心」が重視されているのは、単なる精神論ではなく、学び続けるための土台づくりそのものだからです。
9. 先生の働き方改革も、子どもの教育とつながっている
意外に思われるかもしれませんが、教員の働き方改革も子どもの教育と無関係ではありません。
愛媛県は「教職員の働きがいのある魅力的な職場づくり」を教育政策の柱の一つに据えています。
令和7〜9年度を対象とする県の「学校における働き方改革推進方針」では、次のような取り組みが柱として示されています。
| 働き方改革の主な取り組み |
|---|
| ICT活用などによる業務負担軽減 |
| 教員・専門スタッフによるチーム学校 |
| 部活動の負担軽減 |
| 勤務時間の適正化 |
| 市町教育委員会・学校との連携 |
| 保護者・地域との連携 |
目標としては、時間外勤務が月80時間を超える教師をゼロにすることなどが掲げられています。
先生が疲弊してしまえば、子ども一人ひとりに向き合う時間を確保することも難しくなります。
「先生が働きやすい環境」は、そのまま「子どもが学びやすい環境」につながっているのです。
10. 高校教育は「地域」とのつながりを強めていく
愛媛県の教育政策を理解するうえで見逃せないのが、「地域とのつながり」です。
県の総合計画では、「子どもたちのたくましい成長を支える教育立県えひめの実現」が重要な方向性の一つとして位置づけられており、
KGIレポートでも、地域への愛着や県内企業を知ること、キャリア教育などが重要な指標として扱われています。
これは高校選びにも関わってきます。
これまで高校選びといえば「偏差値がいくつか」「大学合格実績はどうか」「どの高校なら入りやすいか」といった話が中心になりがちでした。
もちろんそれらも大切な要素ですが、これからは「その高校で何を学べるのか」という視点も欠かせません。
| これからの高校選びで注目したい視点 |
|---|
| 地域産業との連携 |
| 資格取得 |
| 企業との交流 |
| 探究活動 |
| ICT活用 |
| STEAM教育 |
| キャリア教育 |
| 地域課題の研究 |
高校は単なる「大学受験のための場所」ではなく、「将来、自分は何をしたいのかを考える場所」へと役割を広げつつあります。
11. 高校入試ではどんな力が必要になるのか
ここまで読んで、「でも結局、高校入試で点数を取らないといけないのでは」と思った方もいるでしょう。
その通りです。入試において、基礎的な知識・技能が重要であることに変わりはありません。
ただ、それだけでは足りなくなってきているのも事実です。
| 力 | 内容 |
|---|---|
| ①基礎知識 | 漢字、英単語、計算、公式など |
| ②思考力 | 「なぜそうなるのか」を考える力 |
| ③判断力 | 複数の情報から必要なものを選ぶ力 |
| ④表現力 | 自分の考えを相手に分かるように説明する力 |
| ⑤情報活用能力 | 資料、グラフ、文章、デジタル情報などを読み取る力 |
| ⑥主体性 | 自分で課題を見つけ、学習を進める力 |
つまり「覚える→解く」だけでなく、「読み取る→考える→判断する→説明する」という学習のプロセスが、これまで以上に重要になってきているのです。
12. 家庭でできる「これからの教育」5つの習慣
では、保護者は何をすればよいのでしょうか。
難しいことを新しく始める必要はありません。
まずは、家庭での声かけを少し変えてみることから始めてみてください。
① 「勉強しなさい」ではなく「今日は何をする?」
「勉強しなさい」では、子どもは具体的に何をすればいいのか分かりません。
「今日は数学のどこをやる?」と聞くことで、自分で決める経験を増やしていけます。
② 「何点だった?」だけでなく「何ができるようになった?」
テストの後、点数だけを見ると「80点だった」「50点だった」で会話が終わってしまいます。
それよりも「前よりできるようになったところは?」「どの問題が難しかった?」と聞いてみましょう。
③ 間違いを責めず、「なぜ間違えた?」を一緒に考える
間違いは失敗ではなく、「次に正解するための情報」です。
「どうして間違えたの?」ではなく「どこで間違えたと思う?」と聞くほうが、子ども自身が考えやすくなります。
④ スマホやAIは禁止するだけでなく「使い方」を教える
これからの社会で、スマホやAIを完全に避けることは難しいでしょう。
だからこそ「使わせない」だけでなく「正しく使う方法を教える」ことが大切です。
答えをそのまま写すのではなく、「ヒントをもらう」「自分の答えをチェックする」「別の考え方を知る」といった使い方を伝えていきましょう。
⑤ 高校を「偏差値だけ」で選ばない
「偏差値が高いから良い高校」「偏差値が低いから悪い高校」という考え方だけでは、子どもの将来を十分に見通すことはできません。
大切なのは「その高校で何を学び、卒業後どうなりたいのか」です。
高校選びは人生のゴールを決めることではありませんが、「自分はどんなことに興味があるのか」を考えるきっかけにはなります。
13. 愛媛県の教育が目指しているのは「未来を自分で切り拓く子ども」
ここまで愛媛県の教育政策を見てくると、一つの大きな流れが見えてきます。
それは、教育の目的が「知識を覚えること」だけではなくなっているということです。
7つの基本方針を見ても、未来を切り拓く力、夢の実現、一人ひとりに応じた教育、安心して学べる環境、教職員の働きがい、地域との連携、生涯にわたる学びと、非常に幅広いテーマが並んでいます。
これは、社会そのものが大きく変わっているからです。
AIが発達し、仕事の内容が変わる。人口が減少する。地域社会のあり方が変わる。働き方が変わる。「正解が一つ」という問題ばかりではなくなる。
そんな社会で必要とされるのは、誰かに答えを教えてもらう人ではなく、自分で答えを探せる人です。
14. これからの「学力」は、テストの点数だけでは測れない
もちろんテストの点数は大切ですし、高校入試がある以上、一定の学力を身につける必要はあります。
しかし、「点数を取ること」と「学ぶ力」は完全に同じではありません。
100点を取ったけれど、誰かに言われないと勉強できない子。
80点でも「自分はここが苦手だから、次はここを勉強しよう」と考えられる子。
長い人生で見たとき、後者の力は非常に大きな意味を持ちます。
学校を卒業した後も、学びは続いていくからです。
大学でも、仕事でも、社会に出てからも、「分からない→調べる→考える→試してみる→失敗する→改善する」というサイクルは続いていきます。
だからこそ「自分で学べる力」こそ、これからの時代の大きな財産になっていくのではないでしょうか。
まとめ ―― 愛媛の教育は「未来を生きる力」を育てる方向へ
2026年の愛媛県教育を見ていると、いくつもの大きなキーワードが浮かび上がってきます。
主体的な学び、ICT・AI、個別最適な学び、不登校への対応、特別支援教育、安心して学べる環境、教員の働き方改革、地域・企業とつながるキャリア教育。
一見するとバラバラの政策に見えますが、実はすべて一つにつながっています。
それは、一人ひとりの子どもが自分の可能性を見つけ、自分の未来を切り拓いていくための教育です。
愛媛県が掲げる「教育立県えひめ」も、教育を単なる学校の問題としてではなく、地域や社会の将来と結びつけて考えています。
県の総合計画でも、教育立県えひめは「人」の分野を構成する重要な方向性として位置づけられています。
だからこそ私たち保護者や教育に関わる人間も、「どうすれば子どもの点数を上げられるか」だけでなく、
「どうすればこの子が自分で学び、自分で考え、自分の未来を選べるようになるか」という視点を持つことが大切なのだと思います。
高校入試は、そのための一つの通過点にすぎません。大切なのは、入試の先にも続いていく「学ぶ力」を身につけること。
これからの愛媛県の教育を考えるとき、私たちが本当に注目したいのは、そこなのではないでしょうか。
愛媛県の教育を考えるために押さえておきたい数字
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 「教育立県えひめ」第3期大綱の計画期間 | 令和5〜8年度 |
| 基本方針の数 | 7つ |
| 令和7年度の重点施策 | 28施策・90事業等 |
| 中学生「自分で考え自分から取り組む」指標(令和7年度) | 98.0ポイント |
| 同指標の令和8年度目標 | 102.0ポイント |
| ICT環境 | 1人1台端末、県独自のCBTシステム等を活用 |
| 教員の働き方改革目標 | 月80時間超の時間外勤務をゼロに |
こうした数字を見ると、愛媛県の教育が目指している方向は、単なる「学力向上」にとどまらないことが分かります。「学ぶ力」「生きる力」「未来を切り拓く力」を、学校・家庭・地域が一緒になって育てていく――それが、これからの「教育立県えひめ」の大きなテーマになっていくでしょう。
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